新旧対照表方式(前編)

 11日(火)、阪南8市4町法規事務担当者研究会があり、例規の一部を改正する方法として一部の地方公共団体で採用されている新旧対照表方式について、私見を述べさせていただきました。
 日本の法令の改正方法は、従来から「「○○」を「△△」に改める」等とする改め文による溶け込み方式を採用しています。「既存の法令の一部を改正する法令は、それ自体独立した法令ではあるが、これが施行されたときには、一部改正法令の本則で規定している元の法令を改正する具体的内容は、元の法令の中に溶け込んでしまい、その附則だけが意味のあるものとして残るという取扱い」(「ワークブック法制執務」法制執務研究会編/ぎょうせい)です。地方公共団体の例規も、法令の改正方法に倣っています。しかし、この法令の改正方法については、法令で定められてはいません。つまり、慣習によっているわけです。自分は、日本語で法令を書くのと同じように、それが当然であると考えていましたし、今もそう考えています。
 そうかといって、頭ごなしに新旧対照表方式を批判するつもりもありません。愛読させていただいている「初心忘るべからず(オモテ)」でtihoujitiさんが「新旧対照表方式でも改め文方式でもどっちでもいい」と述べておられますが、自分も同じ意見です。ただ、新旧対照表方式のメリットを強調した記事などを読むと、「そら、違(ちゃ)うやろ」と思うことがあるのです。
 現在、各地方公共団体で採用されている新旧対照表方式は、溶け込み方式です。従来の改め文によっていた溶け込み方式を、新旧対照表という表を用いることによって、改め文を図式化したものです。それは、あくまで改正前の欄の下線で示した部分を改正後の欄の下線で示した部分に改正するという考え方です。一部改正の例規の本則が表から成るものを「この条例は、……」と言えるのかとか、下線は溶け込まないのかといった議論はさておき、自分は、新旧対照表方式は、究極のローカルルールであると考えています。
 そもそも、地方公共団体の例規は、ガチガチに法令に準拠しているわけではありません。どこの地方公共団体においてもローカルルールは存在します。これまた愛読させていただいている「自治体法務の備忘録」でkei-zuさんが、一部改正の手法について、「どうやったって溶け込むから良いんです」と述べておられることがありますが、これまた自分も同じ意見です。ローカルルールの重要な点は、溶け込むかどうかです。新旧対照表方式が溶け込むのであれば、問題はありません。それを採用するかどうかは、地方公共団体ごとの判断だと考えています。
 鳥取県を初めとして、新旧対照表方式を採用している地方公共団体が増えてきました。正確な数字は分かりませんが、相当数の地方公共団体が新旧対照表方式を採用していると思われます。当初、改正の効力を疑問視する意見もありましたが、相当数の地方公共団体が採用しているという事実をもって、この問題については、クリアしていると考えても良いのではないでしょうか。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 20:18 | 法制執務

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