議会の規則制定権(前編)

 「前2項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する」(地方自治法第16条第5項本文)。
 「他の機関の定める規則とは、他の執行機関の定める規則のみならず、議決機関の規則、すなわち、たとえば、会議規則(法120)、傍聴規則(法130B)も含まれる趣旨である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。
 これだけを読むと、議会には規則制定権があるようにも思われますが、原則として、議会は、規則を制定することができないと解されています。その主な理由は、次の行政実例(昭和26年7月11日)があるからです。
「問 議会又は議長は、第120条及び第130条第3項に規定されているものの外、議会運営上必要な規則又は規程等(規定事項が単に議会内部を対象とするものと、議会外にも及ぶものたとえば議会図書室の運営上図書の貸出に関する規定を設けるものとが考えられる。)の制定権はないか。ないとすればその理由
答 規則という形式によって制定することはできないが、その権限に属する事項につき所要の規程を設けることはさしつかえない。」
 「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)によると、この行政実例の「注釈」には、「一般に行政機関が、その権限に属する事務の処理等に関して内規のごときなんらかの規律、通常規程と称せられるものを設けることは、特にそのことに関しての法律上の根拠を必要とせずになし得るとされている。けだしかかる規律制定権は、当該事務の処理権限のうちに当然含まれていると解されるからである。したがって、議会及び議長においても同じであって、その権限に属する事務の処理について右のごとき規律を設けることはなんら差し支えないところであろう。ただそれを会議規則や傍聴人取締規則と同じく「規則」の形式によって定めることは、特にその旨の法の規定の存しない限り消極に解すべきものであろう」とあります。
 つまり、議会及び議長も、内部規範としてならば、「規程」であろうが「訓令」であろうが「要綱」であろうが制定することができるが、「規則」は、地方自治法で規定された「会議規則」と「会議の傍聴に関し必要な規則」以外は制定できないということです。
 なお、地方自治法第120条は「普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない」と、同法第130条第3項は「議長は、会議の傍聴に関し必要な規則を設けなければならない」と規定しています。このことから考えると、「会議規則」という「議会規則」と、「会議の傍聴に関し必要な規則」という「議長規則」が議会の例規の体系として存在することになります。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 18:20 | 地方自治法

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投稿者   : 2013年8月12日 15:10

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