住居表示台帳の情報公開請求(前編)

 一般的に、情報公開条例は、他の法令等の規定により、閲覧、写しの交付等の公開の手続が定められている場合には適用しないとする調整規定を置いています。例えば、地価公示台帳の閲覧(地価公示法第7条第2項)や住民票の写し等の交付(住民基本台帳法第12条)などについては、この調整規定により、情報公開条例を適用せず、各々の法令等の規定に基づいた手続によることになります。住居表示台帳の閲覧についても、住居表示に関する法律第9条第2項で「市町村は、関係人から請求があつたときは、前項の住居表示台帳又はその写しを閲覧させなければならない」と規定されています。
 この住居表示台長の写しの交付の情報公開請求について、裁判所は、二つの異なった判決をしています。山口地裁平成19年2月8日判決・平成18年(行ウ)第12号とさいたま地裁平成19年10月31日判決・平成19年(行ウ)第1号です。
 山口地裁判決は、山口市情報公開条例第16条が「他の法令等の規定により公開の手続が定められている情報及び市民の利用に供することを目的として作成され、又は保管されている情報については、適用しない」と規定されていることから、他の法令の規定による開示手続との重複を回避する趣旨であると解される行政機関の保有する情報の公開に関する法律第15条の調整規定とは異なり、他の法令等に閲覧又は写しの交付による情報開示の規定がある情報については、同条例の適用の対象としない趣旨を定めたものと解するのが相当であるとして、不開示処分の取消しを求める請求が棄却されています。
 一方、さいたま地裁判決は、戸田市情報公開条例第22条第1項が「法令等に行政文書の閲覧若しくは縦覧又は謄本、抄本その他の写しの交付について規定されている場合は、その定めるところによる」と規定されていることから、住居表示に関する法律第9条第2項は、閲覧についてのみ定めたものであり、写しの交付を求めた本件情報公開請求については、同条例第22条第1項の適用はなく、また、同法は「関係人」以外の者に住居表示台帳の公開を禁止する趣旨までは含まないと解するのが相当であるとして、情報非公開決定が取り消されています。
 その後、山口地裁判決は控訴され、広島高裁平成19年6月29日判決・平成19年(行コ)第7号により棄却されましたが、さいたま地裁判決は戸田市が認容し、市の敗訴が確定しています。
 個人的には、戸田市に控訴してもらいたかったです。さいたま地裁判決には、いくつかの疑問点があるからです。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 17:12 | 情報公開・個人情報保護

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