−管理人のたわごとブログ− 2008年10月
またまたまた、10月27日(月)・28日(火)と滋賀県市町村職員研修センターで政策法務研修の講師をさせていただきました。Tさん(昨年お世話になったTさんとは別人)を始め、事務局の方には色々とお世話になりました。ありがとうございました。
政策法務といえば、「ガバナンス平成20年10月号」(ぎょうせい)62ページのコラムに気になる記事が掲載されていました。
「地方分権改革の残された課題の一つに、「法令による義務付け、枠付け等の緩和」が挙げられている。これは、税財源の移譲とともに、自治体の自由度を高めるために不可欠なものである。
……(略)……
自治体の自治立法能力の現状を踏まえれば、法令で標準的な規定を置くことは必要だろう。しかし、地域固有の事情を踏まえ、自主的に制度設計をしようという意欲のある自治体にまで、法令の規定で縛っていいとは思えない。
そこで、法令の規律密度を低下させるための一つの方法を提案したい。次のような規定を地方自治法に置けば、法令の規定が自治体の事務を規律していても、当該規定の適用を排除することができ、自治体の自由度が格段に高まるのではないかと思う。
「法令の規定により地方公共団体又はその機関が処理することとされている事務について条例に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。」
法令の規律密度を低下させるための極めて簡易な法律改正案だと思うが、いかがであろうか。」
他の法律との関係等はさておき、非常に魅力的な規定だと思います。しかし、こうした魅力的な規定は、地方公共団体にとって、毒にも薬にもなる可能性があります。本市について考えてみると、5歳児に拳銃を与えるような状態にならないかと心配です。
なお、このコラムの筆者は、おおさか政策法務研究会が自治体法務合同研究会に参加するきっかけを作っていただいた人です。
さいたま地裁判決では、原告が「関係人」に該当しないことは明らかであるとしながらも、住居表示に関する法律は「関係人」以外の者に住居表示台帳の公開を禁止する趣旨までは含まないと解するのが相当であるとしています。
「関係人」とは、「住居表示実施区域に住所を有する者が含まれるのはもとより、当該区域に居所、事務所、その他の施設を有する者及び当該区域で新たに住所を設定しようとする者、営業を行おうとする者等も含まれる」と解され、「住居表示実施区域内の住民に限らず、もっと広く解して差支えない」(「住居表示制度の解説」自治省振興課編/政経書院)とされていますが、これは、「関係人」には「このように住民以外の者も考えられるところから、「新住居表示制度の解説」では「住民に限らず、もっと広く解して差支えない」としているものと思われるものであり、誰にでも閲覧を許してよいという趣旨ではない」(「地方自治第430号『地方自治相談室』」地方自治制度研究会編/ぎょうせい)と解されます。ところが、「関係人」以外の者に住居表示台帳の公開を認めるとなると、誰にでも閲覧を許す結果となり、不動産登記法第120条第1項及び第2項等が「何人も」と規定しているのに対し、住居表示に関する法律第9条第2項が「関係人」と規定している意味がなくなってしまいます。同相談室では、銀行員からの閲覧申請を「当該銀行員が関係人の範囲に含まれるということは考えられず、閲覧に応じる必要はないと認められます」としています。
また、同判決は、同法第9条第2項は、閲覧についてのみ定めたものであり、写しの交付を求めた情報公開請求については、調整規定(情報公開条例第22条第1項)の適用はなく、同条例の規定によって写しの交付を認めるとしています。しかし、同法第9条第2項が閲覧に関してのみ規定しているのは、「関係人」の性格上、閲覧によって住居表示台帳の本来の目的を達成することができるからであって、写しの交付については、そもそも認めていないと解するべきではないでしょうか。法律上、閲覧のみを「関係人」に限っておきながら、条例の規定によって写しの交付までもが何人にも認められるというのは、「法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定する憲法第94条に違反しないのでしょうか。
山口地裁とさいたま地裁の判決は、山口市と戸田市の情報公開条例の調整規定の書き方によって、条例の適用関係が異なっています。しかし、両市とも、住居表示台帳の写しの交付の情報公開請求は、情報公開条例による公開請求の対象とはならないと主張しています。各地方公共団体が策定している「情報公開事務の手引」を見ると、「閲覧のみが規定され、写しの交付が規定されていない場合は、情報公開条例の規定に基づいて写しの交付の可否を決定することとし、当該法令等において明文の規定をもって写しの交付が禁止されているものでないときは、写しの交付をしなければならない」としているところもあります。おそらく、今回のような事例を想定した上での解釈・運用ではないのではないでしょうか。
最後に、さいたま地裁判決では「本件公開請求が権利の濫用であると認めるに足りる事情は存在しない」としています。住居表示制度の目的は、住居の表示方法を合理化し、公共の福祉の増進に資することです。そのために、住居表示を実施した区域には、住居番号付定の基礎となる住居表示台帳を備え、当該区域における実施状況を明らかにしておかなければならないとされています。また、情報公開制度の目的は、市民の知る権利を保障し、市の諸活動を市民に説明する責任を果たすとともに、市民の市政への参加を推進し、公正で開かれた市政の実現に資することです。これらの制度の目的を鑑みても、営利を目的とする地図作成業者からの市内すべての住居表示台帳の写しの交付を求めるという情報公開請求は、制度本来の目的を逸脱し、権利の濫用であるとは認められないのでしょうか。
情報公開条例も、根本的な見直しが必要になってきているのかもしれません。
なお、個人的には、住居表示台帳は公開(情報公開コーナー等に開架)すべきものであると考えています。
一般的に、情報公開条例は、他の法令等の規定により、閲覧、写しの交付等の公開の手続が定められている場合には適用しないとする調整規定を置いています。例えば、地価公示台帳の閲覧(地価公示法第7条第2項)や住民票の写し等の交付(住民基本台帳法第12条)などについては、この調整規定により、情報公開条例を適用せず、各々の法令等の規定に基づいた手続によることになります。住居表示台帳の閲覧についても、住居表示に関する法律第9条第2項で「市町村は、関係人から請求があつたときは、前項の住居表示台帳又はその写しを閲覧させなければならない」と規定されています。
この住居表示台長の写しの交付の情報公開請求について、裁判所は、二つの異なった判決をしています。山口地裁平成19年2月8日判決・平成18年(行ウ)第12号とさいたま地裁平成19年10月31日判決・平成19年(行ウ)第1号です。
山口地裁判決は、山口市情報公開条例第16条が「他の法令等の規定により公開の手続が定められている情報及び市民の利用に供することを目的として作成され、又は保管されている情報については、適用しない」と規定されていることから、他の法令の規定による開示手続との重複を回避する趣旨であると解される行政機関の保有する情報の公開に関する法律第15条の調整規定とは異なり、他の法令等に閲覧又は写しの交付による情報開示の規定がある情報については、同条例の適用の対象としない趣旨を定めたものと解するのが相当であるとして、不開示処分の取消しを求める請求が棄却されています。
一方、さいたま地裁判決は、戸田市情報公開条例第22条第1項が「法令等に行政文書の閲覧若しくは縦覧又は謄本、抄本その他の写しの交付について規定されている場合は、その定めるところによる」と規定されていることから、住居表示に関する法律第9条第2項は、閲覧についてのみ定めたものであり、写しの交付を求めた本件情報公開請求については、同条例第22条第1項の適用はなく、また、同法は「関係人」以外の者に住居表示台帳の公開を禁止する趣旨までは含まないと解するのが相当であるとして、情報非公開決定が取り消されています。
その後、山口地裁判決は控訴され、広島高裁平成19年6月29日判決・平成19年(行コ)第7号により棄却されましたが、さいたま地裁判決は戸田市が認容し、市の敗訴が確定しています。
個人的には、戸田市に控訴してもらいたかったです。さいたま地裁判決には、いくつかの疑問点があるからです。
「大阪府の橋下徹知事は16日、中3と小6を対象に今年4月に実施された全国学力調査の市町村ごとの科目別平均正答率を情報公開請求者らに開示した。ただ、開示対象は自主的に公表を決めている自治体に限定し、非公開を決定または方針が未定の自治体は非開示とした。文部科学省が定めた全国学力調査の実施要領は、公表するかどうかの判断は市町村教委に委ねるとしており、知事が開示するのは全国初だ」(10月17日付け朝日新聞朝刊)。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律第3章は、教育委員会及び地方公共団体の長の職務権限について規定しています。教育委員会制度の基本事項を定めた同法の目的は、地方自治の尊重と教育の政治的中立が大きな理念であったはずです。
市町村教育委員会を差し置き、府教育委員会から予算査定用の資料として提出させた全国学力・学習状況調査のデータを知事が公表してもよいものでしょうか。
なお、余談ですが、「学力テスト公表されたら、うち、べったちゃうか?」という会話が職員間であったのですが、「べった」ではなかったです。
各地方公共団体の例規集を調べてみると、ほとんどが、「会議規則」も「会議の傍聴に関し必要な規則」も「議会規則」として制定しています。「議会規則」と「議長規則」とを区別する実益がないという考え方でしょうか。しかし、地方自治法第120条と第130条第3項の主語が異なっている点、つまり、議会と議長とは、その権限を異にしている点は、一考を要する問題ではないかと思います。
また、いくつかの地方公共団体では、「会議規則」及び「会議の傍聴に関し必要な規則」以外にも「議会規則」を制定しています。こうした地方公共団体は、おそらく、議会には規則制定権があると解されていると思われます。そもそも規則制定権を有しない議会又は議長に、「会議規則」と「会議の傍聴に関し必要な規則」のみの規則制定権があるとする昭和26年7月11日付け行政実例は、おかしいのではないでしょうか。
なお、大阪市は「会議規則」を「議決」、「会議の傍聴に関し必要な規則」及びその他規程を「議長決定」として、鹿児島市は「会議規則」、「会議の傍聴に関し必要な規則」及びその他規程をすべて「議会告示」として定めていることから、議会又は議長には規則制定権がないと考えているようです。
条例と規則は、法律と法律に基づく政令のような関係ではありません。規則には、政令と同様に条例の委任を受けて制定されるものもありますが、「必要的条例事項を除けば、法令又は条例の委任等がなくても、地方公共団体の住民の権利義務に関する法規たる性質を有するものを定めることができ、また地方公共団体の内部的規律たる性質を有する規則を定めることができる」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)とされています。
昭和26年7月11日付け行政実例において、規則という法形式の使用を限定的に解した理由は、いわゆる地方分権一括法施行前の機関委任事務に関する規則を意識したものではなかったのではないでしょうか。同法の施行に伴い、機関委任事務(機関委任事務に関する規則)が廃止され、また、地方自治法第14条第2項において「義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」と規定されたことにより、「規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するもの」の存在意義に変化があったと考えるべきではないでしょうか。
本市の市章は、他の多くの地方公共団体と同様に、例規集に掲載し、その書き方を表示しています。当然のこととして、線の太さや長さ、線が交差する角度等が決まっています。
ところが、道路標識等に使用されている市章は、厳密には少々異なっています。おそらく、例規集に掲載されていることを知らない職員が、「こんな感じ」で作成したものが出回ったのではないでしょうか。
個人的には、この微妙な違いが気になっています。こんなことを気にしている人間は、一人しかいないでしょうが……
なお、少数ですが、市章を条例で制定している市もあります。
「前2項の規定は、普通地方公共団体の規則並びにその機関の定める規則及びその他の規程で公表を要するものにこれを準用する」(地方自治法第16条第5項本文)。
「他の機関の定める規則とは、他の執行機関の定める規則のみならず、議決機関の規則、すなわち、たとえば、会議規則(法120)、傍聴規則(法130B)も含まれる趣旨である」(「逐条地方自治法」松本英昭著/学陽書房)。
これだけを読むと、議会には規則制定権があるようにも思われますが、原則として、議会は、規則を制定することができないと解されています。その主な理由は、次の行政実例(昭和26年7月11日)があるからです。
「問 議会又は議長は、第120条及び第130条第3項に規定されているものの外、議会運営上必要な規則又は規程等(規定事項が単に議会内部を対象とするものと、議会外にも及ぶものたとえば議会図書室の運営上図書の貸出に関する規定を設けるものとが考えられる。)の制定権はないか。ないとすればその理由
答 規則という形式によって制定することはできないが、その権限に属する事項につき所要の規程を設けることはさしつかえない。」
「注釈地方自治関係実例集」(地方自治制度研究会編/ぎょうせい)によると、この行政実例の「注釈」には、「一般に行政機関が、その権限に属する事務の処理等に関して内規のごときなんらかの規律、通常規程と称せられるものを設けることは、特にそのことに関しての法律上の根拠を必要とせずになし得るとされている。けだしかかる規律制定権は、当該事務の処理権限のうちに当然含まれていると解されるからである。したがって、議会及び議長においても同じであって、その権限に属する事務の処理について右のごとき規律を設けることはなんら差し支えないところであろう。ただそれを会議規則や傍聴人取締規則と同じく「規則」の形式によって定めることは、特にその旨の法の規定の存しない限り消極に解すべきものであろう」とあります。
つまり、議会及び議長も、内部規範としてならば、「規程」であろうが「訓令」であろうが「要綱」であろうが制定することができるが、「規則」は、地方自治法で規定された「会議規則」と「会議の傍聴に関し必要な規則」以外は制定できないということです。
なお、地方自治法第120条は「普通地方公共団体の議会は、会議規則を設けなければならない」と、同法第130条第3項は「議長は、会議の傍聴に関し必要な規則を設けなければならない」と規定しています。このことから考えると、「会議規則」という「議会規則」と、「会議の傍聴に関し必要な規則」という「議長規則」が議会の例規の体系として存在することになります。
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