企業誘致条例(後編)

 市町村たばこ税都道府県交付金制度は、逆に、交付基準(3倍)までならば構わないとの都合のよい解釈を一部の市町村がするところとなり、改めてたばこの卸売販売業者等の誘致が起こってきています。
 たばこ消費税の収入を得るため、製造たばこ小売人の営業所を町内に誘致し、補助金を交付したのは違法であるとの判決(昭和43年12月26日名古屋地裁判決)があることから、新たに制定された企業誘致条例を見てみると、産業の振興や雇用の創出を図ることを目的として、たばこの卸売販売業者等のみならず、幅広く一定の基準に該当する新規事業者の誘致を図ることとされています。このことによって、同判決で違法とされた補助金の交付とは目的を異にし、産業の振興や経済の活性化等において公益性があると解していると思われます。しかし、実際は、初めからたばこの卸売販売業者等を対象とし、それをごまかすために条例が制定されているように見受けられます。当該条例は明らかに不自然な規定になっていますので、法律又は法制執務の知識のある方ならば、御理解いただけると思います。
 なお、同判決では、「甲町のたばこ消費税収入が増加し、財政が豊かになるから乙被告の営業を助成するための補助金交付は公益のためになされた支出であるというけれども、前記232条の2にいう「公益上必要」とはたんに当該公共団体の収入の増加に役立つということではなく、住民全体の福祉に対する寄与貢献と解すべきものであるし、本件における町税収入の増加は直接には日本専売公社のたばこ消費税納付によるものであって、被告乙は自らの営利のために努力しているだけのことにすぎない。また、その業態も補助金を支出して助成しなければならないほど公共性の高いものでもない。…(略)…被告乙の営業所を甲町の区域内にいざなうのでない限り、みすみす他市町村に巨額の財源を奪われるということをいわんとするのであれば、本件奨励金の支出は収入増加をはかる手段としてすら正道を外れたものと評さざるを得ない」とされています。
 このような企業誘致条例は、市町村たばこ税という制度の抜け穴を利用したものであり、法律上問題があるだけでなく、他の地方公共団体の犠牲の上に成り立つ性格のものであって、極めて不適切なものです。いやしくも地方公共団体がとるべき手段ではありません。
 市議会12月定例会に企業誘致条例が提案されています。文書法規を担当するようになって初めて法規審査を拒否した条例です。

投稿者 おおさか政策法務研究会管理人 : 21:17 | 政策法務

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